【中島哲也監督考】

中谷美紀さん執筆による『嫌われ松子の一年』を読了。撮影中は、女優の自信を根こそぎ失わせかけるような、激しい罵声や怒号の雨あらしだったという、中島哲也監督という人に非常ォ~~~~に興味を持った。折りしも、ツタヤで監督の映画処女作(?)『夏時間の大人たち』を借りることも出来たので。その感想ともども記してみたい。


本の中身は、ほとんどが監督と中谷さんの喧嘩を一部始終実況しているだけ、という趣。たまに休みの日は解放されて、ヨガに行ってリフレッシュ。そしてまた地獄の撮影が始まる・・・という繰り返し。読んでるコチラまで鬱になりそーだったw 感想というよりは、二人の丁々発止のやりとりをそのまま抜粋した方が臨場感も出て良いだろう~と判断して、、、今回も楽(ラク)しま~~~~っす。


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中島VS中谷、2ヶ月1本勝負!それでは試合開始!!!


監督の普段の采配パターン→ 「オッケー」の代わりに「もういいよ!」、「カット」の代わりに「うるさい!」www


遅刻してきた監督に、中谷先制攻撃!! 中谷「ずいぶん遅いので、てっきり次回作『嫌われ哲也の一生』の現場へ行ってしまったかと思いました」中島「ちっくしょう!降ろしてやる!そして俺も降りてやる!」中谷「あれ?怒っちゃいましたか?次に来たら別の女優さんが松子を演じていたりして」

●「ちくしょぉお~~~~!」って、、、まるで小梅太夫みたいなキャラやなぁ~、監督w


中谷「昨夜はよく眠れましたか?何時間くらい寝たんですか?」中島「うーんと・・・何で君にそんなこといちいち報告しなくちゃいけないんだよ。ほっといてくれよ」中谷「気になって仕方がないんですよ」中島「うるさい!あっちいけ・・・   殺してやるっ!」

●何かすごく低次元の争いのような・・・中島監督、「殺す」がきっと口癖なんだなw


木造アパートのセットがボロいので、落ちないようにスタッフが守ってあげて!という会話のとき。中谷「別にいいんですけれど、これが私の遺作になれば、ちょっとでも多くの方に観ていただけるかも知れないですから」中島「でも死んじゃったら作品が完成しないから。あ、別の女優さんで撮るか。くっくっくっ・・・」

●「くっくっくっ」てその笑い方、新野新チックやなぁ~~w


中谷「子役の松子、ものすごくいいですね!」中島「うん、大人の松子よりも、ずっと良かったよ」中谷「明日から、柴咲コウちゃんが松子をやってくれると思います。たぶんお客さんも途中で摩り替わったことに気付かないと思いますから!」


アイドル歌手役の子たちに気を遣っている監督に対して。中谷「監督、優しいですねえ」中島「うん、僕は優しいですよ、主演女優以外にはね」中谷「チェッ!」中島「主演に舌打ちされる監督も珍しいよな」中谷「監督、夜道は気を付けてください。主演女優の方に刺されないように!」

●中谷さんも、結構キツイ事言ってのけてるなぁ~~w


中谷「俳優なんて、所詮コマですから」中島「コマだなんて思ってませんよ。中谷さんの主演映画じゃないですか。ナカタニミキノ、キラワレマツコノイッショウ!!って感じでしょう。僕の最後の映画でもあるけどね。もう疲れたよ。こんな本書かなきゃ良かった」中谷「じゃあ、辞めちゃいますか?残りは中島監督も大好きな山田洋次監督に撮ってもらうっていうのはどうですか?」

●ムフフ。それはそれで、観てみたいかもw山田洋次版・嫌われ松子!!w


ヨリ目の演技に苦労している時。中島「無理なことをやるのが女優でしょう!(ヒステリックに)」中谷「ああ、ギャラが倍になればできると思います」中島「ああ、また言い訳女優が言い訳してるよ」


メイキング映像係の長谷川君に対して。中島「長谷川君は、肝心なところをいつも撮ってないんだよな」中谷「そうですよね、監督の数々の暴言を撮り逃していますよね」


中島「中谷さん、自分のお芝居を目の当たりにしてどうですか?」中谷「どうもこうも、自分の芝居にはほとほと飽きていますので」中島「じゃあ、女優やめればいいじゃない」中谷「そうなんですよ。いつやめようかと考えていたところです」


中島「このやろう。お茶を頭からおかけしましょうか!?」中谷「いいですよ、私は。そのかわり、かけるなら『おーいお茶』にしてくださいね」


五輪真弓さんの『恋人よ』を歌うシーン。中谷「あの、今自分の感情に忠実に演じてみたんですけれど、ウソでも誇張したほうがいいっていうことですか?」中島「あんたの感情なんてどうでもいいから、松子の感情でやってよ!」

●この「あんたの感情なんてどうでもいい」発言が元で、このあと中谷さんは号泣、ついには撮影途中で仕事を放棄して帰っちゃうという荒療治に出たそうな。表向きは病院へ行った、ということで・・・。その後、この事件が却ってガス抜きになり、現場の空気が明るくなったというのだから、何が功を奏するか分かったものではない。


中谷「この間、現場サボって明治神宮で菖蒲を見てきたんですよ。きれいだったなあ」中島「そういうことをするんだ、このアマは。でもいい写真だねえ」中谷「でもほろ酔い加減だったので、あんまり上手に撮れませんでした。ああ、瑛太くんも何か嫌なことがあったら、いつでも帰っていいからね。この現場、途中で帰ってもいいみたい。誰にも怒られなかったよ。ゴリさんもいつでもどうぞ」中島「お前、誰にそんなこと教えてもらったんだ?土屋アンナだろう、そんなこと教えた奴は!」中谷「えへへへへ!」

●やっぱりアンナは、現場の空気に耐え切れずに、何度も職場放棄してたんだろうなぁ~~と想像すると、妙に可笑しいwww 要するに、口うるさい監督には、みなマトモに接することなく、怒られても適当にあしらってる感じで過ごしてたに違いない。(深田恭子なんて、役柄そのまんまに、我関せず、って感じだったんじゃなかろうかw)中谷さんは、その点、真面目に監督と向き合おうとした分、衝突が多くなったんだろうなぁ、というのが感想。オイラの結論。 ではでは、映画の感想に入る。。。





ー引用ー

製作国:日本  製作年:1997  配給:サッソ・フィルムズ配給(配給協力*シネカノン

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●スタッフ

監督: 中島哲也  プロデューサー: 宝田晴夫 

脚本: 中島哲也 撮影: 阿藤正一 

音楽: 菅野よう子  音楽プロデューサー: 金橋豊彦

歌: 遠藤京子 桜井秀俊  美術: 寒竹恒雄  編集: 遠藤誠司 


●キャスト(役名)

日高圭智(たかし) 菜木のり子(順子) 岸部一徳(あつお)

田口寛子(ともこ) 島村千草(夏子)  石川真希(広子)  

伊藤歩(女子高生) 中村久美(順子の母) 小室李奈(かずみ)

大鐘史也(とおる)


●解説

逆上がりができないばかりにダメ人間の烙印を押されそうになってしまった少年の周りで起こる事件の数々を、彼の目を通してスケッチ風につづったノスタルジックなコメディ。監督は“フジカラー写ルンです”などで知られるCM界の名ディレクター・中島哲也で、映画は「バカヤロー! 私、怒ってます」の第2話「遠くてフラれるなんて」以来8年ぶりとなる。脚本も中島が執筆。撮影をCMカメラマンとして活躍中の阿藤正一が担当した。主演は「河童」の日高圭智。


実に瑞々しい感覚の、ジワッと余韻の残る邦画ダッタ。『下妻物語』や『嫌われ松子の一生』との共通点も2~3、見られて嬉しかったりして。。。

まず、中島監督が好きそうな、TV番組を挿入するパターンが今回も炸裂!お昼のメロドラマで三角関係のドロドロが何べんも映し出されてた。あ、楳図かずお漫画「へび女」も挿入されていて嬉しかったナ♪あと、松子との共通項で言うと、階段の上に病弱な家族、っていう設定とか、河原でチョットいいシーンとか、ポワ~ンとした配役を随所に入れるあたり(最近の作品における荒川良々の位置は、岸部一徳が見事にこなしてたw)。主題歌の「帰りたくない」(遠藤京子)が効果的に遣われているのは、『下妻物語』に影響を与えてそうな感じ。しかしまぁ、こーんな、大人の心の深層にある、子供心を、どうしてこうも的確に、映像化できるのだろうね~、この天才監督(中谷美紀公認)は!根っからの、子供心を失わない大人、なのかもねー。あ、そうか、それで、すぐに「辞めてしまえ!」だの「殺してやる!」だのという子供っぽ~い事を口走っちゃうんだナ。そうか。それが真相だったか。