【松子オフィシャル・ブック】シナリオ最高♪

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これで 私の女優人生が終わったか と思いました・・・

中谷美紀さんの撮影日記『嫌われ松子の一年』を買いに行くものの、やはり見つからず。その他の『嫌われ松子の一生』関連の本は、目立つ場所にドドーンと平積みにされているというのに。。。これはきっと中島監督が、本気でこの本の内容が広まるのを恐れ、裏に手を回して圧力でもかけてるんじゃあないかと勘繰ってしまう程・・・不自然な気がするのだった。


『オフィシャル・ブック』を読了。いろいろとためになった。本日も、映画『嫌われ松子の一生』を観ておられない方には、意味不明の日記となることを最初にお断りしておきたい。逆に、鑑賞済みの方々には、是非モンで読んで戴いて、感想をお聞かせ願いたいと思う次第。ではでは、さっそく。


①撮影裏話的・小ネタの数々

●クランクイン3週間前に制作会社がギブアップ。「これは日本の“ロスト・イン・ラ・マンチャ”になる公算大だから、メイキングもしっかり撮っておこう」というのは、中島監督の洒落っ気溢れるコメントw


●撮影の阿藤さんと照明の木村さん曰く、「監督はTV好き。本当は、アニメとかを作りたがってるんじゃあないか?スタッフに駄目出しすることもないわけだから」とのこと。大友克洋さんの「AKIRA」が大好き♪というラジオでの発言が思い出される。やっぱそうなんや~~、と。


●中島監督VS中谷美紀の殺伐とした罵り合いはどうやらガチのようだ。松子が殺人を犯すシーンで使われたレプリカの包丁で、中谷さん何べんも監督を刺してたらしいしw 一度監督がテントにぶつかって頭を5cmほど切った時にも大笑いしてたって(ヒド!)。撮影期間中、『嫌われ松子の一年』の執筆を発表してからは現場の空気がやや和んだらしいが、きっと監督が交換条件を出したんだろうと思われる。「これ以上うるさく駄目出ししないから、ここの部分は書かないでくれ」的なネ。


●CGで咲き誇る花々にも花言葉などの意味があるとか。たとえば、めぐみのマンションへ松子を迎え入れようとするも、逃げ帰るように去ってゆくシーンの手前で咲く花は、ベコニア(花言葉“不調和”)。


●伊勢谷さんは、壁を殴るシーンで、マジ殴りして、手の甲を何度も負傷したそうな。(役者魂?)


●松子が妹・久美の首を絞めるシーンも、中谷さん、手を抜かず本気で締めにかかり、市川さん号泣、しばらく嗚咽と震えが止まらなかったそうな。(これまた役者魂、なのか、それとも監督に虐げられたことによりたまった鬱憤晴らしなのかww)


玉川上水で松子と島津(荒川良々)が出会うシーンは、最初、玉川を見下ろす橋の上での出会いだったが、絵が面白くない、ということで実際に川に入ったのだそうな。結果的にウケるシーンになったと思う。因みにその収録日が偶然、太宰治が入水自殺したのと同じ6/13だったんだって。


②聞き間違い、勘違い、もしくは見落としていたシーンの数々

●コーラス部の顧問をする松子が、船の上で歌うのは、修学旅行時だとばかり思ってた→アレは家へ帰る途中の渡し船


劇団ひとり演じる岡野に振られた後、最後の「なんで!」の台詞の後、壁に叩き付けられていた肉じゃがの芋がポトリと落ちる。→ヘーヘーヘー、全然見落としていたや♪


武田真治演じる小野寺を殺した後、ベランダから自殺を図り、すんでのところで柵を掴み助かるが、あのあと自力で這い上がった腕力は、トルコ白夜でのヒンズースクワット特訓が効いていたからだそうな→ヒョエェ、細かいねえ~♪


荒川良々扮する島津の自己紹介を、最初「俺は猟師だ!」と聞いてしまった。そのあと、「何だ、床屋じゃん!」って思ったけど、言葉の聞き違いには思い至らなかった。。→「理容師」だったのネン♪


●黒澤あすか演じるめぐみの台詞「もちろん相手は男だよ。○○○は塀の中だけ」の○○○のところが聞き取れなかった。→「トイチ」・・・レズビアンの上になる方、という意味らしい。上という字をバラバラにするとトイチになる。攻めと受けの攻めってことか。因みに受けはハイチ。この黒沢さん、どことなくシバ漬けCMの時の山口美江さんに似てるなぁ~~、と漠然と思ってたんだが、何と何と!あのシバ漬けのCMも中島監督の作品だったのだという事を、今日初めて知ったヨ。結構この世界長いんだネェ~。


●松子が急にめぐみと疎遠になるのが解せなかった→ポイントはインターフォンで聞こえた、めぐみの旦那の「おかえり」という言葉にあったのだねー。この作品全体を通してのある意味キーワードかも。故郷へ帰りたいという想い、好きな男の元へ帰りたいという想い、その深層心理に深く語りかけて来る言葉、「おかえり」。。。そう考えると、映画のラストがこの言葉で収束するのも必然だったのだナ。ウム。


●荒川を見つけた時に乗っていたのは新幹線じゃなかった→常盤線だってサ。そりゃそうだ。時間軸合わないもんね。


光GENJIの内海クンからの返事を待ち続けるシーンは、桜→蝉の声→雪と季節が一巡りした事を表していた→ち~~っとも気付かなかったゾナもしw


③シナリオにはあったが本編でカットされたシーンの数々

●警察が美容院へ来て松子が捕まるシーン。シナリオでは、「ちょっと待ってください」と言って、島津のために作った味噌汁の味を調える→本編では、ちゃぶ台の上のお茶碗をソッと自分の分だけ取って行くのに変わってる。二人分のお茶碗が一人分になるシーンが、二人の悲運を暗示させてグッド。個人的には映画版の方が好みだ。


●「ここに居ても地獄、出て行っても地獄」という台詞の前に、シナリオでは松子が部屋でTVを観る。番組は『スチュワーデス物語』!w 黒手袋の片平なぎさが、堀ちえみ演じる松本千明を「あなたに本当の地獄をみせてあげるわ!」と追い詰めるシーンだ・・・。それで先述の台詞に繋がるというわけ。→個人的に片平なぎさは、本編の3回でも出過ぎ!と思ってるので、このカットは妥当だと思う。


●河原を歩きながら、笙(瑛太)が恋人の明日香(柴咲コウ)が言った「人に何をしてあげたかってことだよねぇ」の台詞を思い出す前のシーンで、明日香が笙に電話してくるのがシナリオ版。「ウズベキスタンなんんか行くわけないじゃん!笙の部屋でTV観て待ってるからね。今、片平なぎさの番組やってるの・・」これも蛇足だろう。NO MORE片平なぎさ!!


●松子と龍の心中未遂シーン。シナリオでは松子がまず先に薬を口に含み、龍に瓶を渡すや、「駄目だ!俺は怖い!!」と投げ捨てる。→コレも断然、本編でのWゲロゲロ・バージョンに軍配が上がる。シリアスなシーンなんだけど、それ故にコミカルな演出がバッチリ決まった!!って感じ。


●笙が前日の松子の行動を目撃するシーン。「僕はおばさんのような神様なら信じてもいいと思う」の台詞とともに、シナリオでは、松子の回想シーンがカットバックされる趣向だった。ヒョットコ顔をして父を微笑ませるところ、クドカン演じる作家の八女川を慰め、励ましているところ、龍クンを見守り、温かく包んでやるところ、などなど。そして、ポツリつぶやく。「松子おばさん・・・」と。→本編ではそういう回想シーンは一切入らず。笙はつぶやかない。叫ぶ。「松子おばさーん!!」と。これは、瑛太自身が決めたらしい。監督は若者の感性を大事にしたのだと。個人的には、でも、回想シーン、捨てがたかったかなぁ~~~~。それまで酷い目に遭った事しか描かれなかった八女川との、優しいエピソードなどが挿入されたら、意義あるシーンになったろうになぁ、とは思う。回想シーンを入れた上で「松子おばさーん!!」て叫んでくれてたらば、マイベストだったかなぁ?




以上、結構細かいところを指摘してきたが、ラストシーンの素晴らしさは、ほんと、シナリオを読んでいるだけで、ありありと蘇ってくる程のクオリティの高さである。こりゃあもう、抜粋するっきゃなかろうもん!!


一瞬、花火のように、松子の目の前に光が走り、そして、真っ白になる。すべての音が消えて・・・しばらくすると川の音が聞こえてくる。その音に誘われるように、松子の魂はフワッと空中に浮き上がり、まるで風のように公園を離れ、荒川へ向かう。途中、松子の魂は、ひとりの青年とすれ違う。

笙「・・・・・!」(太陽の塔の鈴の音が響く)

荒川の流れを遡って上流へと(過去へと)進んでゆく。暗闇にゆっくり太陽が昇り、徐々に川を照らしてゆく。光を反射し、キラキラ輝く荒川の川面をゆるやかに遡る松子の魂。土手に、50歳の松子がいる。川の流れをじっと見つめ、涙をポロポロ流している。さらに川を遡る。歌が聞こえてくる。その歌声は徐々に大きくなって・・・荒川の流れはいつしか筑後川の流れに変わる。土手に41歳の松子がいる。川を見つめながら、歌を歌っている。その松子に、小さな男の子が近づいてゆく・・・幼い頃の笙。松子の魂はどんどん川を進んでゆく。家を飛び出し、川沿いの道を自転車で突っ走る24歳の松子とすれ違い、生徒たちと一緒に渡し船で川を渡る新米教師の松子を追い抜き、そして・・・川を見つめながら美しい歌声を聞かせる小学生の松子に近づいてゆく。

父「松子!」

会社帰りの父に呼ばれ、振り返る小学生の松子。その顔がパッと面白い顔になる。父が笑う。松子の魂は、その二人を飛び越えて、松子の実家に向かう。懐かしい我が家。玄関から中に入ると・・・居間では父が気難しそうな顔で新聞を読んでいる。松子に気づき、目を上げて小さく頷く。台所には母がいて、夕食の支度をしている。そのすぐそばで、つまみ食いをしようとしていた弟の紀夫が松子に気づいてニッコリ笑う。いつもと同じ風景。いつもと同じ家族。

声「お姉ちゃん!」

2階から声がする。久美の声。その声を聞いた松子の魂が、実像になる。家を飛び出した時の、・・24歳の松子。松子はゆっくり2階への階段を昇る。一歩、一歩、自分の人生を噛みしめるように昇ってゆく松子。歌が聞こえる。松子が階段を昇りながら歌を口ずさむ。その歌声に、別の歌声が重なる。龍洋一、沢村めぐみ、島津賢治、トルコ嬢の綾乃、岡野健夫、八女川徹也、白い歯の佐伯やコーラス部の生徒たち、それに父と、弟の紀夫までも。人生の一時期を松子と過ごした誰もが、松子を思い出し、皆、松子が歌っていた歌を口ずさむ。

それらの歌声が溶け合い、響き合い、そして・・・嫌われ松子の人生を祝福する音楽になる。長い長い階段を昇り切る松子。目の前に久美がいる。松子がカットした髪型が、とても似合っている。久美が、嬉し涙を浮かべて微笑んでいる。

久美「おかえり!」

松子「(照れたようにクスッと笑って)ただいま」

THE END