【陸軍】木下恵介監督作品その4
■商品の説明:内容紹介・・・質屋の息子・友之丞(三津田健)は、19才の時に王制復古の戦火を体験。それから30年後、父親の後を継いだ友之丞は、妻、息子・友彦(笠智衆)と店を守っていた。そのころ日本は、三国干渉により遼東半島を清国に返還、世論は沸騰していた。憂国の士である友之丞は山県有朋に抗議にでかけるが、狭心症を起こして死んでしまう。やがて、明治37年、友彦(笠智衆)は女中・わか(田中絹代)と結婚。そして、日本は日露戦争へと…。
※映画『はじまりのみち』の劇中でフィーチャーされていた、ラスト10分以外にも、さりげ
に話す会話の端々に、木下監督の戦争への忸怩たる思い(反戦メッセージ)が垣間見えるー
「出征する兵士に涙をみせるなどとはけしからん」とものすごい剣幕で。が、木下恵介は、
「涙を流すのは当たり前。何が悪いか!」と毅然と言い返したというー
※長きに渡る親子の日常を、丁寧に、愛情たっぷりに描いているからこそ、最後の母親の心情が
強烈に突き刺さってくるのであるー
→ 『「大東亜戦争開戦3周年記念」として帝国陸軍から依頼され制作された戦意高揚のための国策映画。公開は1944年11月、敗戦の9か月前のことです。(中略)天皇・国家のために喜んで命を捧げるのが国民の当然の務めだと戒めこの物語は展開するが・・・ところが、どこか変なんです。ときどき不協和音が交じるのです。例えば、中国に派兵された息子の生死を必死で尋ねる男(国のために支援活動を行っている実業家)を罵倒する軍人がいる。「自分の子供一人死んだって、お国のためなんだからなんてことないだろう。うるさい!」と。その軍人は普通の良い人であるのに平然とそう言ってのける。そう言われた男も、自分は恥ずかしいことを尋ねたと言って殊勝にも詫びるのです。しかしこの場面、監督の心の底にある怒りが、観客の心の底にも響いたのではないかと想像します。(中略)夫は軍人であったのに病弱で戦争に貢献できなかったし、息子も泣き虫で女の子のような優しさを持っている。何とか徴兵検査に受かって世間に顔向けができる(ご近所からの非難の目を避けることができる)と、お母さんも喜ぶが・・・もともと、そんな家族を主人公に据えたこと自体が、戦意高揚映画としては異例であるような気がします。しかし、この凸凹家族に注ぐ監督の視線はどこまでも優しい』
えーてるノ箱庭 陸軍 (1944年) 当局の不興を買い、名匠は辞表を提出した問題の国策映画
→ 『幕末から日清戦争、日露戦争を経て満州事変に至る約60年間。愛国心に燃える一家の男たちは、友助(笠智衆)を筆頭に、軍人となり出兵して行きます。女たちは、悲痛な心を隠して気丈に家族を支えるのでした。軍人・友助と対照的に描かれるのは、庶民肌の櫻木(東野英治郎)。ふたりは歳のかわらぬ息子をもち、事あるごとに戦争への見解が違い対立と和解を繰り返すのですが、まともな精神でみれば人間らしいのは櫻木のほう。/このお二方、たいてい笠さんが善人、東野さんが悪人を演じることが多く、そんな意味でも、神風の吹く大日本帝国を疑わない笠さんが善で、東野さんが悪という配役の妙が興味深いです。/ついに出征していく息子を見送る田中絹代は、ほんとうに悲痛で泣けてくるのでした。自分を殺すしかなかったこの時代、描きたいものを描いた木下監督の立派さに胸打たれるおもい』